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で中央の母屋が茅ぶき屋根(トタン板覆い)の家屋であった。
指揮官は、人命の検索・救助と並行し隣接家屋(東側住宅)への延焼阻止を優先するよう救助及びタンク(本署)小隊に下命した。同二個小隊はそれぞれ付近住民からの情報収集及び援護注水による内部検索、並びに建物南からの延焼防止に全力を傾注し、隣接棟への延焼を阻止した。また、分署隊は、建物の北西及び北側を担当、本署隊との包囲体形を整え防ぎょ活動を行った。
七時一八分、五線五口の筒先放水により火勢鎮圧、指揮官は、各棟の内部再検索及び残火処理の任務を各隊に下命した。
七時二五分、炎上特異火災により第二指揮体制に移行し、残火処理に全勢力を注いだ。
しかしながら母屋の茅ぶき屋根がくすぶり続け、思うように消火できない。と言うのも茅ぶきの上にトタン板で覆いが施してあり、そのトタン板の排除、また、積み上げられた大量の茅の取り崩しを行うにも足場が悪く、二次災害の危険性もあり、容易に隊員を屋根上に配置できない。したがって、指揮官は、油圧ショベルの増強出動を決定、七時四五分、担当非番員の参集並びに出動を下命した。
八時二一分、資機材搬送車に油圧ショベルを積載、出動、八時二七分、現場到着、建物敷地内へ自走により進入し、消火活動の妨げとなっていたトタン板及び茅を約三〇分間にわたって排除するとともに作業機(ブーム、アーム等)の機動力を駆使し、迅速に消火活動を実施したものである。

 

おわりに
本火災事例は、茅ぶき屋根とトタン板が消火活動を著しく阻害、従来までの防ぎょ方法では、今回のように短時間で、かつ省労力での消火は困難であったと考える。
この油圧ショベル導入の背景には、先の阪神・淡路大震災での応援活動時における教訓等から、建設機械の災害への有効活用が問われ、早期に導入した経緯がある。今回は、その機械力を救助活動のみならず、一般火災にも十分活用できることを実証した奏功例の一つである。また、本防ぎょ活動中、隊員の疲労及び当務交代時間等を勘案して、人員輸送を行い活動隊員の現場交替が措置されたことを明記しておく。
最後にあたり、現有消防力を最大限に駆使しても対応不可能な災害の発生が危惧される昨今、住民、事業所、行政の三者が一体となった防災まちづくり施策の推進に努め、住民によりよい消防サービスを提供してゆきたい。
(西川和久)

 

救急・救助

大型農業用機械からの救出
水戸市消防本部(茨城)

 

本市は、首都東京から約一〇〇km隔たり、関東平野の北東端に位置する茨城県の県庁所在地で、市の中心部には美しい森と千波湖を一望できる高台に位置する日本三名園の一つ信楽園があり、約十三haの広い園内には、約三、〇〇〇本、一〇〇種類の梅が植えられ、初春には多くの観梅客でにぎわう。そして、周辺部には人と自然との語り合いの場として、また豊かな自然を次の世代に残そうとの構想から誕生した、森林公園や植物公園が散在するなど、水と緑に囲まれた中核都市である。
平成八年四月一日現在で消防事務委託を受けている隣接町村を含め面積、二七四・五九km2、人口二六五、七〇八人、世帯数一二七、十三八世帯で、これに対する消防の体制は一本部、二署、七出張所、職員数は消防長以下二八四人、消防団は二一個分団、団長以下四〇一人で誰もが安全で快適に生活できる、住みよい街づくりを目指している。

 

 

 

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